2008年5月27日火曜日

引き続き事故話というか入院話

前回、下着の取替えについて書いた。そんな3-4日に一回取り替えるくらいでは、衛生管理が悪いのかというと全くそんな事はない。ベッドなどは看護婦さんが毎朝3人がかりでゴミ取りと消毒のようなことをしていくし、布団も一週間ぐらいで取り替えていた。部屋自体も毎日清掃の人が来る。下着の交換ペースは、中国や病院の感覚ではなく、おばちゃんアーイー個人の感覚なのかも。

あるときアーイーが差し入れの梨を食べるか?と聞いてきた。勿論僕は賛成。しかし室内には果物ナイフらしきものはない。どうするのかと思ったら、アーイーは腰にぶら下げたキーホルダー式の折りたたみバサミで皮をむき出した。おいおい、そのハサミ、前に何を切ったハサミだよ?つっこもうにもそこまで中国語が分からない。
しばらくして、まるまる皮をむいた梨が目の前に置かれる。思っていたよりはまともな仕上がり、おいしそう。これが怪しげなハサミでむかれたことは忘れる。まずは手を拭きたいと思い「まおじーん(タオル)」と言いつつ手を拭くしぐさをアーイーにしてみせる。アーイーは、そうかそうかと言う感じで、さっそく濡れタオルを用意してくれた。ではでは、しっかり手を拭き、さてと梨を手に取ろうとした時のことである。アーイーは僕より早く、ごく自然に梨を手に取り、僕から受け取った濡れタオルで梨を拭き出したのである。皮をむいた(しかもハサミで)梨を、僕がしっかり手を拭いたタオルで、まじめな顔でよく拭いていた。

下着の交換ペースはやはりアーイーの感覚のようだ。ちなみに梨は美味しかった。

2008年5月25日日曜日

引き続き事故話というか入院話

やや「しも」入ります。入院話をしようとすると「しも」はどうしても絡んでしまうようですね。

入院新生活はたくさんの疑問符で始まる。それもいままで疑問にも思わなかった事ばかり。寝たきりになると、普段何も考えずにすませている日常の所作が大問題に変わってしまうためだ。そのうち食事(チー・ファン)と排泄(だぁびゃあ、しゃおびゃあ)の疑問は解けた。続いての疑問は体を洗うこと。この病室はかなり良い個室でシャワーまで付いているのだが、まさかシャワーを浴びるわけにもいかない。
これもやはりアーイーにお世話になることになった。やり方は単純、下半身は大便を済ませた後に、その後処理と合わせてまとめて拭いてしまう、いや拭いてもらう。ムスコもね。それ以外は、適当な時間(主に夜)に服をはだけて、ざっと拭いてもらうという形。体を拭かれている間、僕はされるがまま。そして頭の中では(そんな事が実際あるかは知らないが)動物園のトドが飼育係に体を拭いてもらっているイメージが膨らんだ。トドは、この際恥ずかしがらずに積極的に飼育係にお世話になってしまう事で、動物園での生活を肯定的に受け止める事にしていた。事故の事も体のことも、どうにもならない事は受け入れ、どうにかなりそうな事だけ考えていくしかないなと思う。そうしたら先の見通しも立たない中でもそれなりに落ち着けた。
体をひととり拭いてもらい、下ろしたパンツをもう一度穿かせようとしているアーイーに「新的(シンダ)」とお願いする。「新しいの」という意味。せっかく拭いたのだから、下着は取り替えたい。アーイーに旅行カバンの中から新しい下着を出してもらい取り替える。古いのは洗濯してくれるらしい。これで、着替えの疑問も解けた。
次の日、体を拭いてくれたアーイーに再び「新的(シンダ)」とお願いしたところ、笑いながら何か言われ、そのままさっき脱いだパンツを穿かされた。「ズオティエン(きのう)」という単語だけわかった。まるで大阪のおばちゃんが、つっこみを入れるようなアーイーの表情からさっするに「アンタ、昨日穿き替えたばかりでしょう(笑)」という事らしい。え?毎日履き替えるんじゃないの?その後、12日間の入院中、結局パンツは2回取り替えただけだった。